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by angrofille
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ドイツ零年(1948年 イタリア)


監督: ロベルト・ロッセリーニによるネオ・レアリスモの
作品「ドイツ零年」。


終戦直後のドイツ。13歳の少年エドムントは病気の父と
姉、戦争帰りの兄と間借りして貧困のどん底で暮している。
戦争帰りの兄は戦犯になることを恐れひたすら身を隠して
いるため、エドムント少年が年をごまかして墓掘りしたり
泥棒したりして家族のために僅かな食料を得ている。

まともな建物がなく、がれきの山の街の状況もひどいが
彼を取り巻く人々も極めて冷酷で、ごうつくばりの大家、
ホモセクシュアル的なナチスの元教師、皆幼い少年を
こずるく利用して平気な顔だ。

父の言葉も重い。
「わしらも華々しく戦って、ヨーロッパの半分を占領した。
ロシアの中心部まで攻め込んだ。
無敵だと思っていたのに情勢が急変して
負けはじめた後に革命だ。泣けたよ。降服した時はな。
わしはドイツを愛した。
しかし今だから告白するが、この大戦中は第三帝国の崩壊だけを
毎日祈っていたのだ。ドイツが勝っていたらどうなっていたか。
それは考えたくない。」

しかし小枝のような体の、エドムント少年は懸命に
生き抜こうとする。エドムント少年は美しい。
「ヴェニスに死す」のタジオよりも美しい。

ロッセリーニの描き方は全くメロドラマ的ではなく、
幼すぎるためひどい状況だと判断できず、
少年が当たり前だと感じているままに淡々と進んで行く。
その様子がますます見ている側の胸に刺さるのだ。
彼を取り巻く人々の冷酷さは戦争から来るものだという事
がひしひしと伝わってくる。

あまりに無垢なエドムント少年の行き着く先は、
「大人は判ってくれない」のドワネル少年のように海ではなくて、
虚無の彼岸だった。ここはフランスではなくてドイツだったからだ。

見るものの心に深く入り込む大傑作です。
いつの時代になってもこの作品の素晴らしさは失われない
と思います。

☆5つ
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by angrofille | 2005-12-10 03:55 | 映画