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by angrofille
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ラストデイズ(2005年 アメリカ)

「ジェリー」「エレファント」と美意識の怪物のような映画を立て続けにとっている
ガス・ヴァン・サントが27歳で猟銃自殺したカートコバーンをモデルに
人生最後の3日間を過ごすミュージシャンの姿を描く。

ということで実はこの映画はカートコバーンはぜんぜん関係ないんですね。
「自殺に至る人気のあるミュージシャンの最後の3日間」が描かれている
というだけで、べつにスメルズライク〜とかレイプ・ミーがかかったりする
わけではぜんぜんありません。宣伝文句として半ばこじつけのように関連
づけられているだけだというのが見た感想です。こわいこわい。

で、この映画にはストーリーらしきものも希薄でドラマ性も皆無なのですが
凄まじく美しい瞬間がひたすら続くとんでもない映画です。

強い風に倒されそうにふらふら家に向かって歩く主人公のブレイクの後ろ姿、
鬱蒼とした森を掘り起こし、夢遊病のようにただふらつく後ろ姿。
転がり込んでもお金のことしか言わない友人たち、たまに会っても自分の
ことしか言わない知り合い、ツアーのことしか言わないエージェント。
エレファントと同じく、同じ瞬間をそれぞれの人物の視点から再現して見せる
ことによってどの人物にも移入できて同時に移入できなくなってしまう。

ガス・ヴァン・サントはこの映画をゲイの友人がひっそり死んで行った体験が
カートコバーンの晩年と重なり、構想を得たという。
マカロニチーズをぼそぼそ食べる人生がどんなに味気ないか。友達がいても
自分が幽霊みたいな気がすることがどんなに孤独なことか。唯一の生命線の
音楽も広角で撮られる家の窓のなかでかすかに鳴らされるだけ。

美しい森、美しい小川、世界はあまりに美しいがその中で生き抜くのはまったく
容易でない。ラストシーンにキリスト教的梯子を用意したことがガス・ヴァン・サント
による彼らへのレクイエムと希望なのだろう。

☆4.1つ
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by angrofille | 2006-04-12 00:48 | 映画